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2015.12.03

僕の好きなハンカチ episode-5

一番好きなとっておきのハンカチ、つかいかた、思い出など、ハンカチにまつわることを、H TOKYO/swimmieに関わる周辺のひとに、お伺いしていきます。

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5人目は図案作家のアリタマサフミさんです。
アリタさんはH TOKYOが創業した当初から
一緒にハンカチを作ってくださって来た作家さんです。

aritasan_01

—お持ちいただいたハンカチの好きなところ、オススメポイントは何ですか?
この「プリペアドピアノの子猫ちゃん」は僕のなかでも歴代1位ですね。
先日ハンカチになったばかりの新作です。
僕のアトリエがある町田のsmall villageではよく音楽会が開かれています。
このハンカチはプリペアドピアノともに訪れたすてきな音楽家達を
ちょっぴり不思議な子猫ちゃんに例えて描いたものです。
しっぽがたくさんあるのは数人の音楽家達が
町の明かりを目指している様子を表していて
こういう心象スケッチをハンカチにしていただけることは作家冥利につきますね。

koneko

—どんな風にこの作品は生まれたのですか?
瞬発的にさーっとでてきたんですよ。
いい作品ってさーっと向こうから来てくれる感じがあるんですね。
足の形もピアノっぽくしてあったり
そういうのがホントに滑らかにでてきたんですよね。
子猫ちゃんに憑依されたようにすたすたと出て来た感じです。

—色に関してはどうですか?
色出しは自分でシルクで刷るときも一番のこだわりどころなのですが
今回はまさに理想の色が出せました。
ぼかしの感じも含めて東郷青児さんの美人画の色彩感覚なんですよね。
とびきりのお気に入りです。

—2枚目のハンカチも新作ですよね?
はい。これは伊勢丹限定ハンカチとして作ったものです。
僕はなんかこうレトロ作風が印象づいているようなのですが
実はエレクトロや甘い蜜のようなPOPな世界も好きなんですよね 笑
自分の中にはいつもあるのですが
あまり表には出していないというか、出したとしても実験的な感じですね。
プロダクトではなくカンバスに描くというか。
コツコツ描いているものは奇抜なものが多いです。
今回は僕の中に眠っているアバンポップな要素が出て来て快感でしたね。

kurage01

※クラゲ三部作。ピンクのものが今回ご紹介いただいたハンカチです。

—どんなイメージなんですか?
もともとシンセサイザーの音とか、
電脳的なあるいは仮想宇宙のような世界が好きなんです。
クラゲとは言ってもリアルな描写ではなくて
心象というか行灯のようにも見えると思うんです。
ひとつひとつが月の光を放つ宇宙行灯というか。不可思議な世界です。
それとこれらって何かを生んでいる感じがしませんか?
リキんでぽんぽんぽんと何かを産み落としているような。
それぞれのクラゲが謎めいています。
この作品は表現の幅を広げてくれたように思います。

—有田さんの作品の中でも珍しい色合いですよね?
最初はブルー系から描いていったのですが
この色出しがすごく気に入っていて。
7年間の中で2番目に気に入ってます。
このハンカチをある絵を描く人にみせたら
フランス人とかブロンドの白い肌のひとにあいそうな色だねって
言われたんです。僕にとってまた新しい色でしたね。

—今年はたくさん作品が生まれていますよね?
なんだか今年久々にうわーってきてて。
去年までの自分の作品に「なんか古くね?」って言ってる感じだったんです。
展示会をやっても新作は出さなかったんですよね。
洗練されたものを目指してたんです。
僕が一番派手に作品を出してた若い頃って
何も考えずにばーんと描いてばーんと出して運良くウケたんです。
それでステージが少し上に上がるじゃないですか?
多くの人の目にさらされた時に
それに見合う実力をつけきゃって色々練磨して行って。
でもそれでメジャーになったかっていうとそうではなくって
逆にマイナーになったんですよね 笑
出すところも通受けするような場所でやったり。
それが2006年から描き始めたIzumonesiaシリーズにつながります。
そのあとは描きたい衝動が当分来なくって。

—そうだったんですね。ビックリしました!
ポーカーフェイスですからね 笑
ここで終わりなのかなーなんて思って
今度は新しい作家を応援するようになったんです。
ちょっと隠居かなとか思いながらそっちに力を流していたんです。
大学とか若い世代のクリエイター達との語らいは
新しい発見に満ちていてワクワクするものでした。
だから虚無に陥らずに済んだのかもしれないです。

—アトリエも移されたんですよね?
はい。ものづくり学校から町田にアトリエを移したのも
影響があったと思います。
町田はものづくり学校のように賑やかに集う場所ではないし
隠遁感がハンパ無かったから。少しヤバいなって 笑
でもその反動からか今年はなんだか夏前くらいから
うぁーって来てたんです。
そのことにマネージャーの大津さんが反応してくれて
話が進んでハンカチになって。
そう言う意味ではこのクラゲのハンカチは僕にとって
再スタートなんです。サードウェーブですね。
ファーストウェーブがNew Esperanto Labelで
セカンドウェーブがIzumonesiaシリーズで。
このくらげは金字塔な感じですね。大プッシュです 笑

—3枚目も新作ですね。
はい。12年くらい前からのお付き合いがある
スティールパン奏者の伊澤さん率いる
ワイワイスティールバンドの為に描いたものです。
彼は僕がBEAMSでスティールパンを演奏するときに師となってくれた人です。
彼になにかシンボリックなものを、ということで描きました。

WAIWAI

—どんなイメージで作られたのですか?
こちらもパッと降りてきたんですよね。
町田のアトリエで打ち合わせをしたときに鹿がいたっていうのが大きかったです。
アトリエの窓から鹿が見えるし渡り廊下にクジャクがいて
そういった環境で話をしたのでね。
その夜一気に描き上げました。
スティールパンが宇宙そのもののようでキラキラ輝く星のようなイメージなので
以前描いていたネオンクラゲのスピンオフ版を描いて提供したことがあるんです。
今回はそういう星空から舞い降りて来た鹿ですね。
ロゴで波もイメージしています。

WAIWAI2

※鹿のワッペンもあります。アリタさんお気に入りのチェックのハンカチに。

—H TOKYOのハンカチを知ったきっかけはなんですか?
僕のアトリエがものづくり学校の校長室にあったころ
H TOKYOオーナーの間中さんはその学校の事務局長でもあったので
僕のワークショップに参加してくれたりもしました。
その後僕が展示をやるときにハンカチを作りましょうって話になって。
ちょうどそのとき間中さんがH TOKYOを始めるってときで
声をかけてもらったんですよね。
なのでH TOKYOの創設期から知っています。
間中さんははじめ生真面目なイメージでしたけど
実際知っていくと思ったより奇天烈で面白い人でした 笑

—そこからたくさんのハンカチを一緒に作っていただきましたよね。
そうですね。まずは僕が持っていたデッドストックの生地を
ハンカチにしたいっていうオーダーをもらってそこからはじまりました。
その後は復刻で以前描いた図案をハンカチにしていきました。
それからizumonesia シリーズがはじまって全部ハンカチサイズにリメイクして。
KITTEオープンの時には東京ザウルスも限定のハンカチになって。
これも今日持ってきたかったくらい好きなんですけどね。
前の金字塔という感じです。

arita

—ハンカチのこだわりはありますか?
もともとハンカチに対しては無頓着でした。
でもハンカチで鼻をかんじゃうタイプなんですよね。
だから勝負ハンカチとタフなハンカチを2枚持つようにしているんです。
タフな方で鼻をかんだり、かなり荒い使い方をしてます。
だから何回洗っても丈夫なものを選びます。
勝負ハンカチの方はデットストックの不思議な柄のものとか
FUKUZOとかのベタなブランドのものとか
昔のヨーロッパのインチキアニメのものとか
ウケ狙いのものも持つようにしてます。

—「ウケ狙い」いいですね。
ウケを楽しむというか出した時に笑かすためのしかけのハンカチですね。
おちゃめっぷりをチラつかせたいというか。
少し斜めから笑かしたいみたいな 笑
だから結構昔から衝動買いとかもしてました。

—ハンカチは何枚お持ちですか?
自分のものと買い集めたもので50枚くらいは持っています。

—ハンカチにまつわる思いではありますか?
ハンカチに対して色艶のある話はないんですよ。
本当はベンチがぬれてたりとかした時に
そこにハンカチを敷いてあげたりしてみたいですよ。だから願望はありました。
自分の分身できれいな自己犠牲ができるというか 笑
しかも洗濯されていいにおいになって返って来たりしたらまたいいですよね。
そういうのがいいなってうんと若い頃妄想してました。
でも残念ながらリアルにはなりませんでしたけどね 笑

kako

—これからも宜しくお願いします。ありがとうございました。




アリタマサフミ
世界各地のフォークロアや宇宙観、電子音楽、民俗学や風俗史を題材に
テキスタイル図案やグラフィックデザインを展開。