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2016.02.03

僕の好きなハンカチ episode-7

一番好きなとっておきのハンカチ、つかいかた、思い出など、ハンカチにまつわることを、H TOKYO/swimmieに関わる周辺のひとに、お伺いしていきます。

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7人目は魚譜画家の長嶋祐成さんです。
今年1月に一緒にハンカチを作っていただきました。
魚を描くその原点とは?など制作にまつわることなども伺いました。

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—お持ちいただいたハンカチの好きなところ、オススメポイントは何ですか?
実はあんまりハンカチもってないんですよ 笑
これは偶然に友達から4〜5年くらい前に誕生日プレゼントにもらったんです。
結構ヘビーに使っているのでシミとかもついちゃってます。
H TOKYOでハンカチを作らせていただくってなって
持っていたハンカチのタグをみたら「ここのだ!」って感じでびっくりしました 笑
すごく生地がしっかりしていて水を良く吸ってくれる感じがすきです。
全然ヘロヘロにならないんですよね。
洗濯した後アイロンしなくてもちゃんと畳んで
持って行かれるのですごくいいですね。
だからヘビーローテーションで使っています。

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—こちらのハンカチも年期が入っていますね。
これは高校生の頃に学校に持って行く用に
母親が買って持たしてくれていたハンカチなんです。
引っ越しの度に脱落せずにずっとついて来たみたいな感じです 笑

—高校生の時もハンカチをちゃんと持って行っていたんですね!
いや、持ってけって言われてたんですよね。
高校生なんて手を洗ってもこうズボンとかで拭く感じじゃないですか?
だから持って行ってもポケットに入れっぱなしだったりとか
だったんじゃないかと思います。
たぶん母親がハンカチ好きだったんですよね。
コレクションブランドのライセンスもので
百貨店で売ってるのを買ってくるみたいな。
なのでいつもは棚にずっと入ったままなので
今日は久しぶりにアイロンをあててひっぱり出してきました。
特に大のお気に入りというわけでも無いんですけど
ずっと手元にあるので思い入れはあります。
母親は「これわたし買うたんや、へえ~」って言うと思いますけど 笑

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—こちらもH TOKYOのハンカチですね。嬉しいです。
はい。これは今回ハンカチを作るお話をいただいて
最初の打ち合わせの後に何か1枚いただいていこうかなと思って
買ったものなんです。
サテンの生地がすごくきれいですし、サイズが大きいのもいいなと思いました。
使いやすかったですし、見た目がすごい好きなんです。
ポケットから出す度に楽しかったので。
これが写真ってすごいですよね。

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—こちらはてぬぐいですか?
はい。以前働いていた「ヒロコレッジ」さんのものです。
僕は洋服の専門学校に行っていたんですが、
卒業制作の審査は現在活躍中の外部の方々が行う仕組みでした。
その審査の時にヒロコレッジのお二人が来ていて。
僕の卒業制作が着物の染め方を取り入れて作ったもので、
就職先が決まっていない僕のことを「ちょっと面白いかも」っていう感じで
拾ってくださって1年間だけ働いていました。
ヒロコレッジの高橋理子さんは明確なコンセプトを
もってものづくりをされている方で、
デザイナーというよりはアーティストとしての考え方を
しっかりとプロダクトに落とし込んでいました。
もちろん、考え方だけでなくもの自体もすごく魅力的でした。
ものづくりや表現の考え方はヒロコレッジのお二人に学びました。

UO03

—「魚の譜」ってはじめて聞いたのですが、ジャンルなんですか?
あれは僕が勝手につけた名前です 笑
「魚譜(ギョフ)」っていうのはもともとあるんですよ。
僕がそれに「の」を入れて「魚の譜(ウオノフ)」と呼んでるんです。
「魚譜」は昔から日本で描かれてきた魚の図鑑のことです。
すごく有名な「魚譜」はいくつかあるんですが、
グラバーという幕末に長崎にいた人が
(スコットランド出身の商人で武器商人として幕末の日本で活躍した人物)
当時の日本の絵師に魚を描かせた図鑑があるんです。
その絵が本当にすごくて。細密さと美しさに驚きます。
グラバー図譜は細密で精確なタイプの魚譜ですが、
他にもちょっと人間みたいな顔をしていたりとか
イメージでデフォルメして描かれたようなタイプのものもあって、
そういうのを全部ひっくるめて「魚譜」と呼んでいるようです。

—もともと魚が好きだったんですか?
はい。もともと魚は好きで。
熱帯魚も飼っていました。
最初に買ったのは実はピラニアでした 笑
小学校低学年の頃、こども向けの漫画図鑑で
「怪獣のふしぎ」っていう本を買ってもらって。
それにはネッシーとか雪男とかツチノコとかの
未確認生物がいっぱい書いてあったんですが、
その中にピラニアとかチスイコウモリみたいな
「実在するって分かっているけれどちょっと怖そうな生き物」っていうのも
ごっちゃにはいっていて。
ピラニアに対する怖いイメージが必要以上に膨らんでたんです。
でも実はピラニアって熱帯魚屋さんで普通に売っているような魚で、
それを百貨店の屋上のペットコーナーで見たときに
「うわ!あのこわいやつがいる!」っ思ってどうしても飼いたくて、
クリスマスに買ってもらったのが始まりでした。

—一番好きな魚はなんですか?
色々あるんですけど「サバ」です。
見た目もいいですし。顔がいいんですよ!
アジとかサンマとかスーパーで見かける
光ものの魚にもいろいろありますが
一番顔がかわいいのがサバだと思っています。
口がかわいいんですよ 笑
あとは身体の断面がまるいんです。筋肉がすごく引き締まっていて。
色もきれいですし、背中の模様もいろいろで、
日本のと海外ので模様が違ったり、日本のサバの中でも個体差があったり。
そういう面白さがあります。
釣ってもたのしいですし、調理するときも
さばきやすい体のつくりで気持ちがいいんです。
だから見た目よし、釣ってよし、さばいてよし、食べてよしの
いろんな楽しみ方をさせてくれる魚だと思ってます。

—魚を描くきっかけはなんでしたか?
そんなわけでこどもの頃に魚飼ったりするのが好きだったので
それを見ていた父親がちょっと釣りに
連れてってやろうかって言ってくれて。
父親も釣りをしたことはなかったんですけど
同じ会社の方がよく釣りに行っていてその方から色々道具を借りました。
その中に本が一冊あったのですが、海の中はどんな様子になっていて
どういうところにはどんな魚がいるかっていうのを
結構デフォルメした感じのイラストで描いてあったんです。
簡単に描いてある小さい魚なんですけど
すごくリアルに特徴を捉えてあって
デフォルメしてあるのに明らかにその魚って分かるような。
こんな絵を自分も描きたいなと思ったんです。
しかも実際にその本に書いてある場所で
そこにいると書いてある魚が釣れるのが面白いなと思って。
そのころよくノートに小さい魚とかを描いてて。それがきっかけです。
小学校5年くらいだったと思います。

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※こちらが実際の本のイラスト

—それからはずっと描いていたんですか?
いえ実は中学校の終わりから高校にかけて徐々に魚から離れてしまって、
大学で実家を出て、その後行っていた洋服の専門学校時代も
魚を飼ったり釣ったりはほとんどしてませんでした。
また魚に触れ始めたのは社会人になってからです。
それも細々と飼っていただけだったんですが、
2008年頃のある日ににちょっと気が向いて、
こどものころにノートに描いていたみたいな魚を
イラストボードにまとめてみようかなと思って描き始めました。

—絵の勉強は特にされていないんですよね。
そうですね。習い事が苦手なこともあって、
きちんと学んだことはありません。
ただ絵を描くのは子どものころから一貫して好きでした。
洋服の専門学校の時も、洋服を作ることそのものよりも
デザイン画を描いたり、作った洋服にペンキで絵を描くというような
ことの方が好きでした。
なので普通のアパレルは就職できずに、なんとかヒロコレッジさんに
拾っていただいたんですが。

—絵は何でかいていらっしゃるんですか?
日本画用の絵の具で、水彩用の洋紙に描いています。
きちんと習ってないので使い方はめちゃくちゃかもしれません。
まずはえんぴつで下描きをして
マスキングインクで輪郭をたどって
はみ出さないようにわくをつくるんです。
そうするとはみ出すことを恐れずに
筆を動かせるので、そんな描き方をしています。

—ハンカチのこだわりはありますか?
つまんない答えですけどよく水を吸ってくれること。
あとは手に取った時にこれ好きだなって思える
見た目であるっていうのは大事だと思います。
手に取るたびに嬉しいですし、手を洗ったあとに
「あ、ハンカチ使おう!」って思う嬉しさがあるので。

—好きなハンカチの使い方はありますか?
普段会社勤めでスーツを着ているんですけど
ジャケットの脇のポケットにハンカチを入れていたんです。
でもなんだか膨らんでしまうのが嫌で。
ある日、取引先のかっこいい男の人がお尻のポケットに
ハンカチを入れていたんです。
その人はちゃんと身体を鍛えているような人で
もともとお尻がキュッとあがっていてたんですけど
よりお尻があがっている感があってなんかいいなと思って。
それで僕もお尻のポケットにハンカチを入れてみると
多少お尻があがった気になるんです。
鏡で見たことは無いので本当に上がっているか
確認したことはないんですけど 笑
でもそんな風に「自分なりの持ち方」ができてから
ハンカチ使いが楽しくなりました。
そうやってハンカチ使うのって楽しいなって
思い始めた時にハンカチを作らないかっていうお話をいただいて、
これはすごくいいタイミングだなって思いました。
あとは会社行くと机の上に出していることが多いです。
見た目が好きだと出しておきたいですし、手汗をかいた時とか拭いたり。
ケータイをハンカチの上に置いて振動を軽減したりもしてます 笑

—ハンカチは何枚お持ちですか?
10枚未満くらいですかね。てぬぐいも6~7枚持っています。

—ハンカチにまつわる思い出はありますか?
昔、そんなにお金に余裕がなかった頃、
何かの記念に妻にプレゼントをしたかったんですが、
あんまりお金がなかったので
何ができるかなと思ってハンカチを贈ったんです。
ハンカチってめちゃくちゃ高価なものでは無いじゃないですか?
でもいろんな選択肢があって、
どれを気に入ってくれるかなと思いながら選ぶ楽しみもありますし、
すごくすきなものがきっと見つかるでしょうし、
それをプレゼントするのはいいなって思ったんです。
ただそれが何の記念のプレゼントだったのか思い出せなくて、
妻ともあれこれ思い返してみたんですが結局分からなかったです 笑
でもそれも含めていい思い出だと思います。

—すてきな思い出ですね。これからもすてきな魚の絵をたのしみにしています。
ありがとうございました。



長嶋祐成 Yusei NAGASHIMA
魚譜画家。魚と一部の水生生物を専門に描く。
2009年からは企業や団体のコミュニケーションデザイン設計・実施に従事。
1983年大阪生まれ。京都大学総合人間学部卒。