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2017.05.03

私の好きなハンカチ episode-23

一番好きなとっておきのハンカチ、つかいかた、思い出など、ハンカチにまつわることを、H TOKYO/swimmieに関わる周辺のひとに、お伺いしていきます。

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今回は母の日も近いということで
H TOKYO三宿店・岡崎伊都子店長のお母さまにお話を伺いました。
若い頃のハンカチの思い出やその時代のことなども
いろいろお話しいただきました。

今までにお話を伺ったことのない世代なので
ぜひそのあたりもお楽しみください。

a

—お持ちいただいたハンカチの好きなところ、
オススメのポイントを教えていただきたいのですが
こちらはスワトウ※のハンカチですか?
はいそうです。昔スワトウのハンカチがとても人気で
「いつか持ちたい憧れのハンカチ」という感じでした。
それでやっと手に入れたはいいけれど
もったいなくて使えないという 笑
私が買ったのはそこまで高いスワトウではなかったと思いますが
やっぱり普通のハンカチよりは高かったですし
なかなか使えなかったです。

※中国三大刺繍の1つであるスワトウ刺繍。
ヨーロッパの感性と中国古来の技術が融合した
芸術的な美しさを持つ刺繍を施したハンカチ。

b

—こちらは綺麗な桜の柄ですね。
これは宇野千代さん※のデザインのハンカチだと思います。
宇野千代さんは桜がお好きだそうで桜吹雪の柄なんです。
姉からもらったものです。
私はお茶を習っていて着物を着る機会もあるのですが
着物には絶対必需品ですね。
懐に入れて持っていきます。

※宇野千代:大正・昭和・平成にかけて活躍した日本の小説家、随筆家。
多才で知られ、編集者、着物デザイナー、実業家の顔も持った。

c
※桜吹雪のハンカチとお着物を着る際に良く持つという絞り染めのハンカチ。

お着物の場合はやはりシミになるのも心配ですし。
習っている他の皆さんも手ぬぐいではなく
ハンカチを持っていらっしゃいますね。
私の姉は日本舞踊の先生をしていて
着物を日々着ることも多いのですが
やはりごはんを食べに行く時は 必ず持っていますし、
襟に挟んで汁などが 飛んでも大丈夫なようにしていました。
ちゃんとしたレストランなどに行けば ナプキンも用意してあるかと思いますが
歌舞伎座なんかでお弁当を食べる時は
やっぱりハンカチが必需品ですね。
持っていないと怖いです。
ひとたびシミになるとシミ抜きも大変ですので。

—お着物の時は柄に合わせて選ぶのですか?
そうですね。
お着物に合うように少し日本的な柄を選ぶことが多いですね。
ちょっと着物柄ぽいような。

—小さいころはハンカチを持って行っていたのですか?
そうですね。
やっぱり「ハンカチ・ちり紙持った?」とは 親からよく言われていました。
学校でもハンカチ・ちり紙検査がありましたしね。
確か週に1回ぐらいだったと思います。

—その頃どんなハンカチを持っていたか覚えていますか?
柄までは覚えていないですけれど 昔は母がセーターを編んだり
お洋服を作ったりしてくれていました。
その時の端切れを使ってハンカチも作って
くれていたような気がします。
そんなハンカチをわざわざ買っていたという記憶はないんですよね。
でもそんなオシャレな柄はなかったんですよ。
高校生になってからはさすがに制服のスカートで拭けないですし
今のようにエアタオルもなかったですから
姉からのお下がりの花柄のハンカチなんかを 持って行っていましたね。

d

—この写真ではハンカチをお洋服に留めていますね。
これは夫の小学校入学式の写真なのですが
名札の代わりに名前を書いたハンカチを 胸にしていたようです。

—社会人になってからはハンカチを持っていましたか?
持っていましたね。
社会人になった頃、ブランド物のハンカチが出始めた頃でした。
「イヴ・サンローラン」とか「クリスチャン・ディオール 」とか。
私達が若かった時代はこの辺りのブランドがとてもメジャーでした。
あのロゴのマークが入っているだけで
ステータスのハンカチだったんですよね。
「私いいハンカチ持ってます」という感じで
ちょっとわざわざ見えるように出したりして。
だからそれを自分で買えるようになった時は嬉しかったです。
小物までになかなかお金を使えるほど
余裕もなかったですから
ブランドもののハンカチは消耗品の中では高価なものでしたね。

—ハンカチについて思い出はなにかありますか?
ハンカチを持つことは「普通」でしたね。
取り立てて「特別」なことではなくて
ごく当たり前のことだったので
あまり記憶になくってごめんなさいね 笑
でもプレゼントにハンカチをいただいたり差し上げたり
ということが本当に多かったですね。
1枚を綺麗な箱にでも入れてもらえれば
そんなに高いものでもないけれど
そんなに安いものでもないですし。
とてもちょうどいいプレゼントでした。
今のH TOKYOさんはハンカチ好きな方が
ご自身のために買っていかれることも多いようですけれど
私たちの時代はどちらかというと
自分で買うよりもいただくことの方が 多かったように思います。
ハンカチってある意味消耗品なので
もらっても困らないですよね。
本当にちょうどいいプレゼントとして
よく利用されてきたと思います。
気持ち的にも金銭的にも双方重たくない贈り物ですよね。

—そのプレゼントのハンカチはどこで買っていましたか?
やはり百貨店ですね。
それこそ私たちの時代は百貨店に行くことは
ステータスでしたから。
当時海外のブランド物のハンカチは
百貨店でしか扱ってなかったですしね。
いただいた方もその百貨店の包装紙に包まれているだけで
「いいものいただいた」という感じで なんだか嬉しかった時代でした。
今でもあるとは思いますけれど
今以上に百貨店の包装紙の重さというか力があったように思います。
それにブランドもののハンカチは自分では
なかなか買えない贅沢品だったので
より嬉しい贈り物でした。

—ブランドのハンカチは特別なものだったのですね。
そうですね。
普段はブランドの入っていない普通の
ハンカチを持っていて なんかちょっとお出かけの時とかに
そのブランド入りのハンカチを持って
出るような感じでした。
勝負の時に取っておくというかね 笑
普段はある時からやっぱりタオルハンカチが増えてしまいましたよね。
でも昔はタオルハンカチなんでもちろんなかったですし
いわゆる「ハンカチ」を皆さん持っていましたよ。
タオルハンカチが出てきてからは
やっぱり少しおしゃれをして出かける場面で
ハンカチを持って行っていましたね。

—おしゃれをした時はハンカチもあると気持ちも
シャキッとする気がします。
ハンカチもそうですけどやっぱり身だしなみですよね。
ちょっと違う話になりますけれど
19歳とか20歳くらいの時に 少しいいレストランに
連れて行っていただける機会も多くなった時
あるフランス人の奥様がお料理を作って
ご主人様が給仕をされているレストランに
連れて行ってもらったんです。
若かったですしタンクトップにシャツブラウスを
羽織って前を開けて行ったんですよね。
その時にフランス人の特派員の方が来ていらしていて
お店のご主人にこうおっしゃったそうです。
「お若い人だからこれからのこともあるので
あえて失礼かもしれませんけれど言わせていただきます。
どんなに高価なものじゃなくてもいいです。
お安いものでもいいです。
でもボタンのきちっと閉められるようなものを
ディナーの時には着るものですよ。
これからそういう機会も増えるでしょうから
それは知っておいたほうが良いのではないでしょうか?」
と言ってくださったんです。
すごくありがたかったですよね。

—そうやって色々なことを知って大人になっていくのも
大切なことですね。
そうですね。それからはもちろんディナーの時は
気を付けるようになりましたし、
ハンカチもお出かけの時は持って行って行きますよ。
おしゃれなハンカチを持つことが
自分の中でレディーの身だしなみのひとつという感じですかね。

e
※昔買ったハンカチ白いハンカチを今でも持っていらっしゃいました。

—ご家族はハンカチを持たれますか?
はい。夫の父は90歳を超えた今でもハンカチを持っています。
それは母が毎日必ず仕事に行く時に
ハンカチを用意しておいたからなんだそうです。
それが今でも習慣になっているようです。
自宅の洗濯機で洗えるような普段着にも
いつもハンカチが入っています。
ちょっとその辺に買い物みたいな時でも持っていますね。
身だしなみのひとつなんでしょうね。

—ご自身も旦那さまにそのようにハンカチを渡していましたか?
私は夫にそうやってハンカチを用意していたことは
なかったですね。
あえてハンカチをっていうのは正直記憶にないです。
今となってはどこでどうやって拭いていたのか 笑
やっぱり娘がハンカチ屋さんで働き始めてから
持つようになりました。
今ではいつもポケットにも入っていますよ。

—ハンカチは何枚くらいお持ちですか?
夫は20枚くらいは持っています。
わたしは5枚くらいですかね。
主婦なのでなかなか外に出る機会も少ないので
手ぬぐいやタオルを首に巻いたり
ちょっと買い物に出かけるときなんかはタオルハンカチを
持ってしまうことも多いです。
でもよそ行きバッグの中には必ず入っています。

—ハンカチの中で好きな素材や柄はありますか?
綿のハンカチも好きですけど
麻の方が素材としては好きですね。
H TOKYOで買った海外のリネンなんかも
日本にはない感じで色がとっても綺麗だったから。
柄というよりかは色に目がいきますね。
出かけるときにハンカチを選ぶときは
洋服に合うような感じかさし色を選びます。
あとは季節感ですかね。
なのでリネンのハンカチは夏場に活躍しています。

f
※娘さんからもらった刺繍入りのリネンのハンカチ。

—もうすぐ母の日ですが ご自身のお母さんに何か差し上げたことはありますか?
それこそハンカチをあげましたね。
紙で作ったカーネーションが包装紙についていたのを覚えています。
やっぱり百貨店で買ったのだと思います。
我々の時代は特にそんなに高いものを母親にあげる
ということはなかなかできなかったので
ハンカチが一番しやすかったです。
結婚してからは母の誕生日が5月でちょうど母の日も近かったので
少し奮発したディナーをすることが毎年恒例になっていました。
そうやってできるようになったのも嬉しかったですね。

g

—好きなハンカチの使い方はありますか?
使い方というか感動したものなのですが、
H TOKYOで働く亀山さん※がハンカチ1枚で折った
立体のうさぎです。
なんて素晴らしいんでしょう!と思いました。
ハンカチ1枚からこんな形になるのだとびっくりしました。
それに「しろいうさぎとくろいうさぎ」という絵本があって
娘たちにも読んでいましたし色もそのままでしたからとても気に入って。
飾ってあるとどうしても汚れてしまいますけど
ハンカチなので一度解いて洗濯して
またお願いして折っていただきました。
自分で折れたらいいんですけど。
講習会をしてほしいくらいです 笑
飾っているのがピアノの上ということで重たいものだと
震災のこともあったりして落ちたときに傷つかないようにできますし、
うさぎは我が家の守り神というかシンボルなので。
夫も私も卯年なのと何かでうさぎは守り神だっていうのを聞いたので
我が家にはうさぎがたくさんいます。
なのでどこかでうさぎのいいものを見つけた時は
買ってきています。

※以前の亀山さんのインタビューはこちら

h

 

※岡崎家のうさぎシリーズのひとつと、ピアノの上に置かれいる様子。

・このうさぎは以前H TOKYOで開催されていた
ハンカチ研究会で「干支をハンカチで表現しよう」という
課題の中で亀山さんが考えたうさぎなんですよ。

ご自分で考えたなんて本当にすごいですね!
これはわたしにとって一番のハンカチのエピソードです。
若い頃持つことが憧れだったハンカチが
立体になって我が家の守り神になっちゃったみたいな 笑
これは本当に素晴らしいハンカチの使い方だと思います。

ありがとうございました。
ハンカチが当たり前でありながらも
ちょっとした憧れになっていた時代があったなんて
素敵だなと思いました。
ぜひこれからも「持ちたくなる」、そして「差し上げたくなる」
ハンカチを作っていけたらと思いました。